薬以上の効果ができる? 心臓病 と 痴呆 には不足したビタミンを補う 心臓の病気がある人は、血圧を安定させる薬以外にビタミンBの薬が必ず処方されます。ビタミンと薬との関係性、病気の症状にどのような作用を及ぼすのでしょうか?
動脈硬化の予防
コレステロールは体の細胞膜を作るのに必須物質ですが、、多過ぎると動脈硬化を進める原因になもなります。コレステロール値を下げるのに最も効果的なのは、ビタミンB群の一種であるナイアシンです。
コレステロールには、悪玉コレステロール(LDL)と善玉コレステロール(HDL)があります。善玉コレステロールは血管にこびりついた悪玉コレステロールを肝臓に引き戻し、動脈硬化を防ぐ働きもあります。
悪玉(LDL)と善玉(HDL)はこちら。
ナイアシンは、この善玉コレステロールを増やす働きがある。また、コレステロール値が高くても、動脈硬化にならない人もいます。
これは、単純にコレステロールが増えるのが問題ではなく、コレステロール(悪玉のLDLコレステロール)が酸化されて変性することが、動脈硬化の引き金になることがわかってきました。
酸化を防ぐには、抗酸化ビタミンである ビタミンC や ビタミンE をとることが重要です。
特に、脂溶性ビタミンである ビタミンE は、血管内の脂肪層の中に詰まったコレステロールに働きかけるので、脂質の酸化を止めるには最も効果があります。
ビタミンB12 、 葉酸には心臓病の原因であるホモシステインを減らす働きがあるので、これらの摂取も有効です。
血糖値が安定せずに高くて心配
血糖値が高めの人に特に重要なのがビタミンB群です。血糖値が高いのは、血中に糖があふれている状態。ビタミンB1 をたっぷりとって、糖質の代謝を高めなければなりません。ビタミンB1は糖分の代謝を助ける働きをします。
お米中心の食生活の日本人は、エネルギーの6割を炭水化物からとるため、B1は不可欠です。また、血糖値が上がると脂質のコントロールもうまくできなくなり、血中のコレステロールが上がって高脂血症や動脈硬化になりやすくなってしまいます。この予防には、脂質の代謝を高める ビタミンB2 の摂取が有効です。
さらに ビタミンB6 は、ブドウ糖をグリコーゲンや中性脂肪に変えるインスリンを合成し、分泌する能力を高める働きがあるので、積極的に摂るべきでしょう。
抗酸化作用を持つ ビタミンC と ビタミンE は、糖尿病の合併症の高血圧、動脈硬化を防ぐ効果があることから、多めに摂るといいでしょう。糖代謝には ビタミンC が必須です。特に、インスリンの作用が弱っている場合、ビタミンC はインスリンに似た働きで血糖を減らす作用があります。
最近、物忘れがひどい
高齢化が進むにつれ、痴呆は大きな社会問題になっています。現在のところ、薬物療法も大きな成果を上げているとはいえないのが正直なとろでしょう。
そんな中で ビタミンE が注目を浴びています。1つはアルツハイマー病(詳しくはこちら)。記憶中枢の細胞が死んで起こる病気ですが、なぜ脳の細胞が死ぬのか原因はよくわかっていません。
しかし、最近になって酸化ストレスが細胞死の原因になっている可能性を指摘されています。事実、米国の研究では抗酸化ビタミンである ビタミンE を毎日 2000 IU のむと、アルツハイマー病AD)のの進行がわずかだが遅れることが確認されています。
この研究では、中等度レベルの患者を対象としたもので、病状が進行して服が着られなくなるまでに要した時間が、偽薬群では平均440日であったのに対して、ビタミンE群では平均670日と230日ほど時間が長くなりました。この結果を確認するため全米規模の臨床試験が進められています。発病する前から服用していれば、もっと顕著な効果を期待できると専門家は口を揃えます。
月経前にイライラする
生理前になるとイライラする、うつ、眠気、不安感、鬱症状、足腰の冷え、お腹や胸の張り、肌が油っぼくなりニキビができやすくなるといった一連の症状を月経前症候群(PMSと呼びます。
これは、血液中の女性ホルモン、エストロゲン(卵胞ホルモン)が多くなり、別の女性ホルモンであるプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が低下してホルモンバランスが崩れるのが原因です。これらの不快な症状の解消には、エストロゲンの代謝に働くビタミンB6がお薦めです。ビタミンEは、血行を良くし、ホルモンのアンバランスを改善してくれるので、不快な症状の緩和に作用します。
目やほおがピクピクひきつる
目やほおがピクピクとひきつるのは、まぶたやほおを支配している運動神経のけいれんで、睡眠不足やストレス、アルコールの飲み過ぎなどで、疲れがたまっているときに起こりやすい症状です。
まず、疲労を改善するのはビタミンB群です。
B1は中枢神経や末梢神経の働きを正常に保つ働きがあります。日本人が最も不足しやすいのがB1といわれています。B2は脂肪の代謝、B6はたんばく質の代謝を受け持ち、B群全体で連携しながら、脳や神経の働きを正常に保つ作用があります。どれが不足しても疲労がたまりやすくなり、末梢神経に悪い影響を与えてしまいます。
薬と一緒にビタミンは摂るべきか?
処方薬でも大衆薬でも、多くの薬品が体の栄養状態に影響を与えています。薬品の中には、味覚を変えたり、口を渇きやすくさせたり、吐き気を誘ったりして、食欲を減退させてしまうものあります。
こうして食が細くなれば、体に入ってくる栄養素の量は同時に減少し、また、栄養素の吸収を妨げたり、排せつを促進させたり、体の中で利用されるのを妨害したりするケースもあります。以下のリストは、一般的な薬品をとることで不足しやすくなるビタミンの一例です。不足分はサプリで補うといいでしょう。
- アセトアミノフェン → 不足するビタミン → ビタミンC
- アルコール → 不足するビタミン → ビタミンB1、B2、葉酸
- 抗生物質 → 不足するビタミン → ビタミンB2、ナイアシン、葉酸、ビタミンC、ビタミンD、ビオチン
- 降圧剤 → 不足するビタミン → ビタミンB6
- 抗炎症剤 → 不足するビタミン → ビタミンB6、B12、葉酸、ビタミンC、D
- 利尿剤 → 不足するビタミン → ビタミンB2
- 下剤 → 不足するビタミン → ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE